マネジメント編6回シリーズ(6-5)
「組織の温度」はマネジャーの背中が決める
こんにちは。
「これからの時代のマネジメント術」シリーズ、第5回では、「ルールで縛る」よりも「空気をつくる」ことの大切さについてお話しします。近年、多くの企業でコンプライアンスやハラスメント対策のために「ルール整備」が進んでいます。
しかし現場レベルでよく耳にするのが、
「ルールはあるけど、空気が悪くてやりづらい」
「規則に書いてないことを注意された」
「やっていいことなのに、何となくやれない雰囲気がある」
そう、ルールが整っていても、空気が悪いと人は動きません。むしろ、「空気さえ良ければ、ルールは最小限でもうまく回る」ことが多いのを前職時代にも数多く経験してきました。
■ 「ルール」は人を縛り、「空気」は人を動かす
ルールとは、いわば「行動の制限」を目的としたもの。一方で、空気(雰囲気や文化)は「行動の指針」になります。
たとえば、
- ルール:「始業時間は9:00です」
- 空気:「みんな9時前には来てコーヒー片手に談笑してる」
- 結果:新しく入った人も自然に8:50くらいに出社する
このように、空気は言わずとも伝わる力を持っているのです。
■ 「空気」は人の心を左右する無言の合図
組織の空気というのは、明文化されていないけれど、すごく強い力を持っていると思います。
- 質問しやすい空気
- ミスを報告しやすい空気
- 意見を言いやすい空気
- 上司に相談しやすい空気
- 感謝を伝え合う空気
こういった空気があるかどうかで、チームの心理的安全性は大きく変わります。逆に「無言の圧」「暗黙の了解」「指示が飛ばないと動けない空気」があると、どんどん人は萎縮してしまいます。(まあ、企業の成長具合で使い分けが必要ですが)
■ 空気をつくるのは、「マネジャーの立ち居振る舞い」
では、その空気は誰がつくるのか?
答えは、マネジャー(リーダー)です。
空気は、言葉よりも「態度」「行動」「しぐさ」から生まれます。
- 上司がミスを責めない → 部下も報告しやすくなる
- 上司が雑談に参加する → 会話が増えて風通しがよくなる
- 上司が感謝の言葉をよく使う → チームに感謝の文化が根づく
- 上司が困っている人を気にかける → メンバーも自然と助け合う
つまり、マネジャーの背中が組織の空気を決めるんです。
■ ルールだけで管理しようとすると、組織は「冷える」
ルールは組織運営に必要です。でもそれだけで管理しようとすると、以下のような状態に陥ります。
- 「やるべきことしかやらない」
- 「問題が起きてもマニュアル通りにしか動かない」
- 「前例がないことは敬遠される」
- 「“これはやっていいの?”と常に確認が必要」
- 「空気を読むことだけが求められ、発言しづらい」
このような組織では、新しいアイデアや挑戦が生まれにくくなりますよね。
■ 空気づくりに必要なのは「温度」と「余白」
じゃあ、良い空気をつくるにはどうしたらいいか?
ポイントは2つあります。
① 温度:あたたかさがあるか
・誰かが困っている時に、自然と手を差し伸べられる
・「ありがとう」「ごめんね」が素直に言える
・成果が出たら、みんなで喜べる
この「あたたかさ」が、チームの心理的安全性をつくります。無機質なルールでは生まれない「ぬくもり」が、空気を育てる。
② 余白:余裕があるか
これ、意外と大切です。
・無理なスケジュールでみんながピリピリしてないか
・会話ができる余白があるか
・休みやすい環境か
常に張りつめた状態では、どんなにいいルールがあっても空気は重くなります。
「余白のあるマネジメント」が、あたたかい空気を生みます。
■ 空気は「仕組み」ではなく「日常」でつくる
良い空気をつくろうと、制度やイベントを導入する企業も多いですが、本当に効果があるのは日々の小さなやりとりの積み重ねです。
- 朝の「おはよう」
- 雑談の中での笑顔
- 「ありがとう」の一言
- ランチの誘い
- 帰る時の「おつかれさま!」
こういう些細な行動こそ、空気をつくる大きな要素。
空気とは、日常の延長にしか存在しないのです。
■ 「ルールを減らしても、空気が整っていれば組織は回る」
最後に、ポイントをまとめてみます。
- ルールは必要だが、それだけでは組織は動かない
- 空気(文化や雰囲気)が心理的安全性を生み出す
- 空気はマネジャーの日々の言動から生まれる
- 「温度」と「余白」が良い空気を育てる
- 空気づくりは制度ではなく、日常の中で起こる
これからのマネジメントは、「ルールで締める」のではなく、「空気で包む」ことが求められます。
数字や制度でマネジメントしていた時代から、「感情」や「雰囲気」をマネジメントする時代へと変わってきているのです。
是非、参考にしてみてください。採用活動が上手くいくスタート地点かもしれませんね。(^_-)-☆
最終回(第6回)は、「最強の組織は、ゆるくつながる」というテーマでお届けします。
強くしなやかなチームをつくるための“ゆるさ”の正体について書いてみます。