マネジメント編6回シリーズ(6-4)
「ちゃんと見てるよ」が生む信頼関係
「これからの時代のマネジメント術」シリーズ、第4回のテーマは、「評価」よりも「承認」の重要性についてです。
「評価してるのに、なんでモチベーション上がらないんだろう?」「ちゃんと点数つけて、査定してるのに…」
そんな疑問を感じたこと、ありませんか?
実はそれ、評価と承認の違いを理解していないことが原因かもしれません。
■ 評価は上から目線。承認は横の目線
まず、この2つの違いを明確にしておきましょう。
| 種類 | 主な意味 | 目線の違い |
| 評価 | 成果に対する採点 | 上から(ジャッジ) |
| 承認 | 行動や存在の肯定 | 横から(共感) |
「評価」は上司が部下に点数をつけるもの。
「承認」は、「あなたの存在や努力をちゃんと見てるよ」というメッセージです。
現代のマネジメントでは、成果に対する評価よりも、プロセスや姿勢への承認が圧倒的に重要になっています。
■ 人は評価よりも、「自分を見てくれている」に心が動く
人が一番嬉しいのは、「成果を認められること」ではなく、「自分の努力を誰かがちゃんと見ていてくれた」と感じることなんです。
たとえば、
- 雨の中でも時間通りに出社していたスタッフに「今日も遅れずに来てくれてありがとう」
- クレーム対応後の部下に「大変だったよね。でもあのときの落ち着いた対応、すごく良かった」
- 地味な作業を淡々と続けている人に「こういう仕事、誰よりも丁寧にやってくれて助かってるよ」
これって、いわゆる成果じゃないですよね。
でもこういう「見てるよ」の言葉が、人のモチベーションを根っこから支えてくれるんです。
■ 評価だけで管理しようとすると、組織は冷える
評価制度は、組織運営上必要です。でも、それだけに頼ると、現場はこうなります。
- 「評価される仕事しかしない」
- 「目立たない仕事は誰もやらない」
- 「数値で評価できない仕事が軽視される」
- 「他人の足を引っ張ってでも自分が上に行こうとする」
つまり、「評価されること=価値がある」となってしまうと、組織全体がギスギスしていくんです。
■ 承認は、人を見て動くマネジメント
じゃあ、どうやって承認するか?答えはシンプルです。日常の中に「見てるよ」をちょっとずつ入れるだけです。
- 「ありがとう」
- 「助かったよ」
- 「あなたがいてくれると安心する」
- 「あの対応、私は良かったと思ってる」
- 「最近、頑張ってるよね。ちゃんと伝わってるよ」
こういう言葉、照れくさくてなかなか出てこないかもしれません。でも、こういうあたたかい言葉が、チームの雰囲気をつくります。
■ 「承認」はタイミングが命
承認って、「伝えるタイミング」もめちゃくちゃ大事です。
・月末の評価面談で褒められるより、
・クレーム対応した日にねぎらいの言葉をかけられたほうが、何倍も心に残る。
たとえば、
終業後、机に残ってたスタッフに「今日も遅くまでお疲れ様、助かったよ」と声をかける。
朝イチ、出社してきた部下に「おはよう。今日もよろしくね」と笑顔で言う。
そんな小さな一言が、「この会社にいていいんだ」「自分の仕事は意味がある」と思わせてくれる。
■ 「承認文化」が根づくと、組織は変わる
承認を土台としたマネジメントを続けていくと、以下のような変化が起きてきます。
- 部下同士の声かけが増える
- 「ありがとう」が自然と飛び交うようになる
- ミスが報告されやすくなる(責められない安心感がある)
- 離職率が減る(居場所感が強くなる)
- 自発的に動く人が増える(指示待ちが減る)
承認が空気のように自然に交わされる組織は、強くてしなやかです。
■ 「評価=数字」「承認=人間関係」
評価は数字で管理するもの。承認は人間関係を育てるもの。
どちらも必要ですが、「人を動かす力」は圧倒的に承認にあります。
モチベーションは数字では育ちません。
心が動いてこそ、行動が変わるんです。
■ 今までに経験した、使えるワード
- 「よく気づいてくれたね!」
- 「助かったよ、ありがとう」
- 「あなたがやってくれると安心する」
- 「それ、あなたらしいね」
- 「今のやり方、すごく良かったと思う」
- 「あの時の対応、私はちゃんと見てたよ」
- 「いつも変わらずいてくれてありがとう」
何も大げさに褒める必要はありません。
ちょっとした共感や感謝の一言が、承認になります。
これからの時代のマネジメントに必要なのは、「点数をつけること」ではなく、「心をつなぐこと」です。
評価で人は管理できても、動かすことはできません。承認で人は、「自分から」動き出すと思いませんか?
第5回は、「ルールよりも、空気で統率せよ」というテーマでお届けします。
ルールでは人は動かない、空気づくりの重要性について掘り下げていきます。