成長には質と量は不可欠
「働き方改革」。この言葉は、ここ数年で日本中の会議室とニュース番組を賑わせたキーワードです。残業を減らし、有給を取りやすくし、効率的に働く。確かに、社員の健康やワークライフバランスを守るうえで、これほど分かりやすい政策はありません。 はい、今回は働き方改革について、私の見解で書いてみます。
私は長年、組織マネジメントと社員教育の現場に立ち続けてきた経験から、一つの疑問を抱き続けています。
「働き方改革は、果たして人と企業の成長を阻害してはいないか?」
もちろん、ブラックな働き方を肯定するつもりはありません。ただ、私が見てきた多くの「伸びる社員」や「飛躍する企業」には、必ず共通する特徴があります。
それは、「量をこなした人にしか質は語れない」という事実です。
〇量をこなさずして、質は磨かれない
人材育成の場で、若手社員がこう言うのを何度も聞きました。「効率的にやれば、そんなに数をこなさなくても成果は出るはずです」確かに、理論上は正しい。
でも、現実はそんなに甘くない。
スポーツでも、芸術でも、営業でも、最初から効率的なフォームや方法を身につける人はいません。下手なスイングを何百回も繰り返すからこそ、体が正しい感覚を覚える。拙い文章を何百通もメールで打つからこそ、言葉の選び方が洗練される。
情報がすぐに手に入る社会の中では、泥臭い過程です。しかし、その泥臭さを通り抜けた者だけが、後に「質」を論じられる立場になる。残業を減らすことは大切ですが、「やるべき量」を経験しないまま効率化を求めるのは、免許を取る前から高速道路を走ろうとするようなものだと考えています。
〇イノベーションは、寝る間も惜しんだ先に生まれる
こんな経営者の方がいます。その人は小さな町工場を継ぎ、資金繰りにも人材確保にも苦しみながら、ある革新的な製品を世に出しました。その開発期間、彼は毎晩3時間しか寝ていなかったといいます。休日は試作と検証、深夜は特許の書類作成、朝は仕入先への交渉。
「そんな生活、働き方改革に逆行している」と言われるかもしれません。ですが、その努力があったからこそ、その製品は業界を変え、社員の給与も上がり、会社の働きやすさも向上したのです。
イノベーションの現場にいた人は分かるはずです。
革新は、余裕の中からではなく、切迫感と情熱が交錯する瞬間から生まれるものです。つまり、短期的には非効率に見える働き方が、長期的には効率を飛躍的に高める結果になるのです。
〇営業不振に効く特効薬は「次のアポ」
営業現場で部下に聞かれる質問があります。
「最近、全然契約が取れません。どうしたらいいでしょう?」
私はこんな風に回答します。
「悩んでいる暇があったら、次のアポを取れ」
営業がうまくいかない時ほど、人は分析や反省に時間を使いがちです。もちろん、振り返りは必要ですが、それは行動量が十分に確保されている場合に限ります。アポ数が極端に少ない状態で質を考えても、机上の空論になってしまう。
営業不振の突破口は、質ではなく量の確保にあります。
次の訪問、次の電話、次のメールなど。行動を止めないことが、結果を引き寄せる最大の方法です。
〇働き方改革の本質を見誤らないために
私は働き方改革そのものを否定する気はありません。社員が健康で意欲的に働ける環境を整えることは、企業の義務ですからね。しかし、その「改革」が「努力の総量を減らすこと」とイコールになってはいけません。
本来の目的は、「やるべきことをやり切るために、働き方を最適化する」ことです。若手社員には泥臭い量の経験を積ませ、ベテランにはその経験を効率化へと向上させる。このバランスが取れた時、組織は最も強くなると考えています。
〇量と質を両立させるためのマネジメントの工夫
- 成長段階に応じたKPIの設定
新人は「質」よりも「件数」「時間」「回数」を重視。
中堅以降は「成果率」「改善提案数」など質的指標にシフト。 - 短期集中型のチャレンジ期間
1~3か月間、あえて高負荷の業務量を与え、成長曲線を一気に引き上げる。 - 量を可視化する仕組み
行動量を見える化し、「やった感」ではなく「やった事実」で評価。 - 成果が出た後の休息投資
量をこなした後は、意図的に休暇を与え、脳と体の回復を促す。
私は前職時代にたくさんの社員と接してきました。その中で一番成長したのは、必ずと言っていいほど、最初にとんでもない量をこなした人です。朝早く会社に来るし、貴社したように見せて、一人で会社に戻り、目の前の仕事に取り組んだりと。今の時代、そういった社員を無過ごしたらダメなのですが、見て見ぬふりしてました。まあ~、管理者が把握していれば問題ないと。
後に「質の追求」に移り、誰よりも効率よく成果を出す存在になったのは、言うまでもありません。働き方改革の時代にあっても、この真理は変わらないと信じています。効率化だけを追うのではなく、必要な時には泥臭く量をこなす覚悟を持つ。
時代背景もあり難しいと思いますが、その先にこそ、個人の成長と企業の成長があると思うんですけどねえ~。参考にしてみてください(^_-)-☆