そのためにも本業を磨き上げる大切さとは
新規事業を立ち上げるとき、多くの中小企業の社長が抱く共通の悩みがあります。
「何から始めればいいのか分からない」「失敗したら会社が傾くのではないか」「資金調達ができるだろうか」
私の知り合いの社長さんも何度も新規事業に挑戦し、うまくいったものもあれば、静かに幕を閉じたものもあると言っています。聞いたことや、私の考え方について、書いてみようと思います。
新規事業は特別な才能や画期的なアイデアだけで成り立つわけではないということ。むしろ、基本的な順番や考え方を押さえることが、成功の確率をグッと高めます。
1. お客様が先か、サービスが先か
新規事業を構想するとき、多くの経営者が陥るのは「自分のやりたいサービス」から先に考えてしまうことです。
「この商品は絶対に売れる!」という情熱は素晴らしいのですが、市場にお客様がいなければ、それはただの自己満足に終わります。
私が学んだ鉄則はシンプルです。
お客様 → サービスの順番で考えること。
まずは「誰に向けた事業か」を明確にします。そのお客様がどんな悩みを持ち、何にお金を払うのかを理解することが先決です。例えば、既存顧客にアンケートを取ったり、商談の中でヒントを拾ったりするだけでも、アイデアの方向性は大きく変わります。
2. 無料で利用できる情報発信ツールを使いたおす
現代は、情報発信のコストがほぼゼロに近い時代です。SNS(Instagram、Facebook、X)、ブログ、YouTube、メールマガジンなど、無料で始められるツールは山ほどあります。新規事業では、まず無料の発信ツールを「使いたおす」ことが重要です。これは単なる広告ではなく、「市場調査」や「ファンづくり」の段階でも活用できます。
たとえば、SNSに試作品の写真を載せ、反応を見ながら改善する。動画で製品の使い方や事業の裏側を見せ、見込み客との距離を縮める。この段階で得られる反応は、机上のマーケティング資料よりも価値があります。
3. スタートは最小限のコストで試し打ち
新規事業は、最初から完璧な形を目指す必要はありません。むしろ、小さく試しながら大きくしていくことが大切です。例えば、イベント出展、クラウドファンディング、期間限定販売など、低コストで市場の反応を確かめられる方法はいくつもあります。この試し打ち段階で得られるデータは、その後の本格展開に向けた重要な判断材料になります。
失敗しても傷が浅く、修正が効く。成功の兆しが見えれば、そこから投資を増やして拡大すればいい。
「まずはやってみる」が、最大のリスクヘッジになるのです。
4. 必要なコストは、本業で捻出する
ここで重要なのが資金の出どころです。新規事業専用に借金をしてしまうと、失敗したときにダメージが大きくなります。経験上、新規事業の初期コストは本業で稼いだ利益から捻出するのが理想です。本業の利益が安定していれば、精神的にも余裕を持って新しい挑戦ができます。
そのため、新規事業を始める前にやるべきことは、まず本業の収益性を高めることです。利益率を上げる、無駄なコストを削る、既存顧客の単価を上げる。
こういった地道な改善が、新規事業の安全な資金源になります。
5. 新規事業の借り入れは、銀行が貸したくなる工夫をする
どうしても外部資金が必要な場合、銀行からの借入を検討することになります。しかし、銀行は「新規事業そのもの」よりも、「その事業を運営する会社の実力」を見ています。
- 本業が黒字で、資金繰りが安定している
- 返済原資が明確
- 新規事業のリスクを把握しており、対策が練られている
- 事業計画書が数字ベースで現実的
つまり、銀行を説得するには「本業の健全性」と「具体的な数字の裏付け」が欠かせません。新規事業の夢を語るだけでは、資金は動きません。
6. 本業を磨き上げることが、新規事業成功の土台になる
ここまで読んでいただくとお気づきかもしれませんが、私が繰り返し伝えているのは、「新規事業の成否は、本業の状態に大きく左右される」ということです。本業がしっかり利益を出し、安定している企業は、新規事業でも有利に動けます。反対に、本業が不安定なまま新しいことに手を出すと、事業が「二兎追う者は一兎も得ず」になりがちです。
新規事業は「大胆さ」と「慎重さ」のバランスが命です。大胆さがなければ挑戦できず、慎重さがなければ守れない。そして、そのバランスを取るための最大の武器は、磨き上げられた本業です。安定した土台の上なら、挑戦はもっと自由になります。
もし今、新規事業を構想しているなら、まずは自分の本業をもう一度見直してください。
その磨き込みが、新しい挑戦の勝率を大きく上げるはずです。
参考にしてみてくださいね(^_-)-☆