適材適所の配置は、各自のタイムスパンが大切
突然ですが、あなたの会社のスタッフの方、「未来」をどこまで見ていますか?
1年先? 1ヶ月先? いや、1週間後のランチのことしか考えていないかもしれません。
そんな話をすると、「いやいや、うちの社員は真面目ですから!」と反論が聞こえてきそうですが……
人間は意外と“短期的なこと”しか考えていない生き物なんです。
〇タイムスパンって?
まず最初に、「タイムスパン」について説明しておきますね。
簡単に言うと、“どれくらい先の未来まで思考できるか”という時間的な幅のことです。
これは「性格」や「知識量」よりも、もしかすると配置・役割の適正において、とっても重要な視点なのに、ほとんどの採用面接では語られません。実にもったいない。
〇大半の人は「明日の天気」くらいしか考えていない
前職時代に社員たちと雑談中にこんな質問をしてみました。
「5年後、会社はどうなってると思う?」と。
返ってきた答えは、
- 「5年後ですか……うーん、転職してるかも(笑)」
- 「会社ですか? なんかAIが全部やってそう」
- 「その前に僕の車のローン終わってますかね」
私が聞きたかったのは、事業戦略的な未来像なんですけど!
でも、これが現実。
ほとんどの人は、「明日の天気」や「今週末の飲み会」くらいまでしか、自然には思考しない。
つまり、1〜2日のタイムスパンで考えるのが、人間の“デフォルト設定”なんです。
〇数ヶ月先、数年先を考えられる人は“稀少種”
ほんと稀なんですが、こんな人がいます。
- 「このプロジェクト、来年の市場動向から逆算すると今始めるのがベストです」
- 「3年後の人員構成を見据えて、今この役職に空きを作るべきですね」
この人たち、もはや経営者の思考領域に片足突っ込んでるんですよ。
こういう人は、自然と数ヶ月、数年単位で物事を考えられる。いわば“ロングスパン型人材”です。
〇タイムスパンと仕事の相性
さて、ここからが本題です。
仕事には、それぞれ“求められるタイムスパン”がある。
たとえば、
- 倉庫でのピッキング作業:その日の正確さが命。つまり“数時間〜1日”のタイムスパンで十分。
- 営業職:1週間〜1ヶ月先の見込みを追いかける。つまり“短〜中期スパン”が必要。
- 中間管理職:チーム体制の先を考える。少なくとも“半年〜1年”先を見る力が必要。
- 経営陣:最低でも“3〜5年先”を想定しないと、会社が右往左往します。
つまり、「適材適所」とは単に能力や経験で見るのではなく、“その人がどこまで未来を自然に考えられるか”で役割を決めることが重要なんです。
〇タイムスパンを無視すると、どうなるか?
私がかつて見た「悲劇の配置ミス」があります。
とても誠実で、作業も几帳面。まさに“現場の職人”タイプの社員を、「そろそろリーダーになってもらわないと」と課長に昇進させました。
結果、どうなったか?
- ストレスで胃を壊し、3ヶ月で降格希望
- チームからの相談を「自分でやった方が早い」と抱え込み
- 未来の戦略より、今日のチェックリストが気になって仕方ない
完全に「役割のタイムスパン」が合ってなかったんです。彼は“1日単位で完結する仕事”に才能を発揮するタイプでした。
それを“半年後を見据えるマネージャー”にしてしまったのですから、うまくいくはずがないですよね。
〇採用活動でも「未来の見え方」を確認しよう
では、どうすればタイムスパンを見極められるのか?
面接では、こんな質問をしてみたらどうでしょうか。
- 「あなたは今、どれくらい先のことをよく考えますか?」
- 「1年後に自分がどうなっていると思いますか?」
- 「5年後の当社の状況を、どう予想しますか?」
内容そのものより、考え方の「時間軸の長さ」を見るんです。
たとえば「1ヶ月先にこうなっていたい」という人には、“短期完結型の仕事”を任せれば、活き活きと働くでしょう。
一方で「3年後の業界構造がこう変わると思う」と言う人には、中期プロジェクトや企画職など、未来を描く仕事を任せるとハマります。
〇タイムスパンに“優劣”はない
ここで強調しておきたいのは、タイムスパンの長短に優劣はないということです。
「短い=考えが浅い」「長い=賢い」ではありません。
問題は、合っているかどうか。
短期型の人に長期ビジョンを語らせたら頭がこんがらがるし、長期型の人に日々の小さなトラブル処理を延々とやらせたら、息が詰まります。
人間にはそれぞれ“ちょうどいい視野の距離”があるんです。
それを理解して配置すれば、みんな無理せず力を発揮できる。
それこそが「適材適所」の本質だと、私は思います。
〇経営者のタイムスパンは「20年後」まで
私たち経営者のタイムスパンは、普通の人よりちょっと特殊です。
「今期の売上」も見つつ、「来期の体制」も考え、「10年後に残る文化」も意識する。そして「20年後、会社がどうなっているか」なんて想像して、勝手に感傷に浸ったりする。
まぁ、時々「今日の昼飯なんだったっけ」と忘れるあたり、短期スパンは少し劣化してるかもしれませんが(笑)
あなたの会社にも、いろんなタイムスパンの社員がいるはずです。
その“思考の距離”を知ることが、採用・配置・育成すべての起点になります。
これからの採用活動では、ぜひ「履歴書」だけでなく、その人が見ている“未来の距離”にも目を向けてみてください。
案外、それが“人財”を“人罪”にしない最良の判断材料になるかもしれませんね。
参考にしてみてください(^_-)-☆