経営者が今、本当に目指すべき組織とは
「うちは働きやすい会社です」
近年、多くの企業がそうアピールするようになりました。残業が少ない、福利厚生が充実している、フレックスやリモートワークが可能など。確かに、こうした制度は大切です。働きにくい環境を改善することは、企業としての責任です。
しかしですね~・・・
「それだけで、本当に人は働き続けたいと思うでしょうか?」
働きやすい会社を作るのは、もはや“前提”です。その先にあるべきは、「この会社で働きたい」「この仕事がしたい」と心から思ってもらえる会社をつくることです。それこそが、組織が持続的に成長する鍵であり、経営者が本気で取り組むべきテーマです。意外と悩んでいる中小企業の経営者の方多いんですよね~。
1. 働きやすい会社の落とし穴とは。
「働きやすさ」を重視しすぎるあまり、企業が陥るワナがあります。それは、快適さ=満足感と錯覚してしまうことです。
例えば、業務負荷を下げるために仕事を分業化しすぎたり、評価基準を曖昧にして社員の不満を出さないようにしたり…。一見、従業員にとって“優しい会社”に見えますが、その反面、
・やりがいを感じにくい
・成長実感がない
・責任の所在が不明確
などの副作用も出てきます。
働きやすさを追求することで、社員が受け身になり、組織が“温室”化してしまうこともあります。
結果的に、優秀な人材ほど離れていくリスクを抱えるのです。
2. 「働きたい会社」とは何か?
では、「働きたい会社」とはどんな組織なのでしょうか? それは、以下のような要素を兼ね備えた会社だと考えています。
- 理念やビジョンに共感できる
→ 単なる労働の場ではなく、「自分の存在価値」が感じられる場所。 - 自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できる
→ 貢献している実感があることで、仕事に意味と誇りが生まれる。 - 成長できる機会がある
→ 新しいチャレンジや学びがあり、個人の可能性を広げられる。 - 仲間と信頼し合える関係がある
→ チームとしての一体感、互いを認め合う文化がある。 - 仕事を通じて「なりたい自分」に近づける
→ キャリアの道筋が描け、自分の未来と会社の未来が重なる。
つまり、「働きたい会社」とは、“心が動く会社”です。
給料や制度だけでは得られない、“働く理由”がそこにあるのです。
3. 経営者が果たすべき役割とは?
「働きたい会社」を作るには、経営者の姿勢と意思が問われます。制度や環境を整えることは当然ですが、それ以上に必要なのは、会社の“魂”をどう注ぐかという視点。
具体的には、以下のような行動が求められます。
◎ ビジョンや志を語り続ける
経営者がなぜこの事業をしているのか、どんな未来を実現したいのか。それを繰り返し、ぶれずに伝えることで、社員は“共感”を持って働くことができます。
◎ 社員一人ひとりの人生に関心を持つ
どんな目標があるのか、どんなキャリアを描いているのか。上司と部下という関係ではなく、一人の人間として向き合うことで、信頼関係が生まれます。
◎ 課題に共に向き合い、挑戦を称える
チャレンジの機会を提供し、失敗を責めず、挑戦を称える文化を育てること。これは“安全な挑戦空間”をつくることであり、社員の主体性を育みます。
4. 企業文化が「働きたい会社」を決める
人が「働きたい」と思うかどうかは、企業文化に大きく左右されます。企業文化とは、日々の言動、価値観、暗黙の了解、空気感…そうしたものの総体です。
例えば、こんな文化が根づいている会社は魅力的です。
- 失敗してもチャレンジを讃える
- 相談しやすく、助け合う風土
- 上司が部下を“管理”ではなく“支援”している
- 成果だけでなくプロセスを認める
- 「ありがとう」が自然に飛び交う職場
これらは制度ではなく、日々の行動からしか生まれない文化です。そして文化の核になるのが、経営者の考え方とふるまいです。
5. 働きたい会社づくりは、未来への投資
「働きたい会社」をつくることは、短期的な成果にはつながりにくいかもしれません。しかし、中長期的に見ると、圧倒的な組織の競争力となります。
離職率は下がり、社員のエンゲージメントは高まり、優秀な人材が自然と集まるようになります。何よりも、社員が自ら動き、組織を進化させていく「自走型組織」へと変わっていきます。
6. 経営者自身が「働きたい」と思えるか?
そして、最後に問いたいのはこれです。
「あなた自身が、今の会社で働きたいと思えていますか?」
もし「YES」と言えるなら、その思いを社員に真っ直ぐ伝えてください。もし迷いがあるなら、それが会社の未来に反映されてしまいます。
経営者の目が輝いていない会社に、社員の心が動くことはありません。だからこそ、「自分もこの会社で働きたい」と胸を張って言える組織を、自らの手で創り上げていきましょう。
働きやすい会社ではなく、働きたい会社を!
そこに、真の経営力と未来があると思います。