経営者はBS思考を
こんにちは。梅雨明で毎日暑い日が続きますね。先程、出張から帰ってきて、事務所でブログ書いて帰社します。出張中に次の質問を受けました。
「経営って、結局なんですか?」
「経営とは、資本を回し、お金を動かし続けることです」と答えています。
売上をつくる、利益を出す、社員を育てる、商品を開発する――いずれも重要な経営活動ですが、それらはすべて「資本をどう回すか」という延長線上にあります。
経営者であれば誰もが押さえておくべき「BS思考」=バランスシート的な視点についてお話します。表面的な売上や利益では見えない、お金の流れと資本の構造を理解することで、企業の成長と安定性は大きく変わります。
〇「PL思考」と「BS思考」の違い
経営者が陥りやすいのが「PL思考」です。
つまり、損益計算書(Profit & Loss statement)の数値ばかりを気にする考え方です。
- 売上はいくらか?
- 経費はどこまで抑えたか?
- 今期の利益はいくらか?
もちろん、これらは重要です。ですが、PLだけを見ていては「企業の健康状態」はわかりません。
例えるなら、PLは「今月どれだけ稼いだか」という収支表です。一方、BS(バランスシート)は、企業の“体の構造”そのものを表します。
〇資本を回すとはどういうことか?
経営における「資本の回転」とは何か?
それは、会社の持っているお金や資産(=資本)を使って、価値を生み出し、また次の活動資金に変えていくプロセスのことです。
例:在庫を仕入れて → 売って → 売掛金を回収して → 再び仕入れる
この流れの中で、資本が止まってしまうとどうなるか?
- 売掛金が長期化して資金繰りが悪化する
- 在庫が滞留してキャッシュが寝てしまう
- 設備投資しすぎて、現金が足りなくなる
つまり、資本の回転が滞ると、黒字でも倒産しかねないのです。
〇経営者は“お金の流れ”に敏感であれ
お金の流れ、つまりキャッシュフローに敏感になることは、経営者にとって死活問題です。PLでは黒字でも、手元に現金がなければ、社員の給料も払えません。納税もできません。ビジネスチャンスが来ても、動けません。
キャッシュフローとは、血流のようなものです。いくら筋肉(利益)があっても、血流が止まれば身体は動かないですよね。
〇BSを見て経営判断ができるか?
「現預金が増えた」「借入金の返済が進んだ」「自己資本比率が上がった」
こうした数字の変化を見て、経営者が「何が起きているか」を読み取れるかが、BS思考の第一歩です。
実際にBS思考をどう活用するのか、以下にポイントを示します。
ポイント1:資産の“質”に注目せよ
資産が増えていても、その中身が在庫や回収できない売掛金ばかりでは意味がありません。
・現金、預金比率が健全か?
・流動性の高い資産になっているか?
在庫過多=現金化できない資産 → 資本の回転が鈍る原因になります。
ポイント2:負債の“重さ”を測れ
負債が多いことは、悪ではありません。
問題は、その返済スケジュールと、事業のキャッシュ創出能力とのバランスです。
・短期借入と長期借入の比率は?
・返済の原資となる営業キャッシュフローは安定しているか?
ポイント3:自己資本比率に目を向けよ
自己資本とは、返済義務のない“本当の意味での企業の体力”です。これが薄いと、少しの経済変動でも倒れやすくなります。
・自己資本比率が30%未満なら要注意
・毎年、利益を内部留保として蓄積できているか?
〇経営は「回す力」×「止めない力」
経営とは突き詰めるとこの2つだけだと思います。
- 資本をいかに効率的に回すか(回転)
- 資金の流れをいかに止めないか(流動)
この2つが両輪で機能すれば、売上の浮き沈みにも耐えられる経営体力がつきます。逆に、これが欠けると、いくら事業が好調でも足元から崩れます。
〇「会計に強い社長」が強い理由
会計に強い経営者ほど、冷静な判断と打ち手が早いのが特徴です。
- BSを読み、資金繰りの変化を先読みする
- 投資と回収のタイミングを設計できる
- 売上より利益、利益よりキャッシュを重視する
これこそが、「数字が読める社長」と「感覚だけの社長」の分かれ道です。
〇経営者こそBS思考を
「売上が上がった」「黒字だった」では、企業は守れません。本当に見るべきは、お金の流れと資本の構造=BSの世界です。
- 資本を回すとは、リスクをとって価値を生み、お金を循環させること
- 現金の流れを止めないことが、倒れない会社の基本
- PLではなく、BSにこそ経営の本質がある
- 経営者は、感覚ではなく数字に基づく「構造的思考」が必須
経営が不安定なときこそ、「お金は今、どこに滞っているのか?」「資本はどう回っているのか?」と自問してみてください。答えは、PLではなくBSの中にありますよ。
参考にしてみてくださいね(^_-)-☆