【物流倉庫業 ― コンサルタントの本音】
■表に出る課題
物流倉庫業には常に同じ悩みがあります。
これはどの倉庫でも語られる表の課題です。
長年この業界を見てきた実感として、物流現場の本質的な問題は、別のところにあります。
■裏側にある倉庫特有の課題とは
物流倉庫が他業種と決定的に異なるのは、「正解の見えない現場」で生産性を求められる点です。
同じ商品を扱っていても、日々の入出荷量の波、作業者スキルのばらつき、突発作業、ロケーション変更、顧客からの急な依頼など、毎日が変動要素の塊。
だからこそ、単純に「もっと作業スピードをあげて」「もっと効率化して」と言っても、現場は動きません。
実は、倉庫業で一番重要なのは人の気持ちと段取り力なのです。
■クライアントには少し言いづらい本音
物流倉庫のコンサルをしていて、本音で感じることがあります。
1.求めすぎです。
正直に言うと、多くの倉庫は「現場に求めるレベルが高すぎる」のです。
物流現場の中心にいるのは、
・高年齢層
・扶養内パート
・Wワーク
・現場経験はあるがロジスティック理論は知らない人
など、多様な背景の方々。
にもかかわらず、「スピード・正確性・気配り・報告」などフルスペックの総合力を求めてしまう。
本音を言えば、そこまで求めるなら「給与体系も変えないと無理です」という企業がほとんどです。
2.顧客の気持ちが分かる人材は本当に少ないです。
倉庫業で目立つのは、「荷主目線がないことによるミス」 です。
これは能力不足ではなく、「荷主の立場を知らない」 だけ。
ですが実際には、この顧客視点がある人材の価値はとてつもなく高い。
それだけで現場の品質は安定します。
3.淡々とやる人材こそが倉庫の宝です。
物流は、華やかさとは真逆の世界。
だからこそ、「変化の少ない作業を、嫌な顔せず淡々と続けられる人」は、倉庫にとって最重要な人材です。
コンサルの本音としては、「このタイプの人が10人いれば倉庫は回る」というレベルで重要な存在です。しかし多くの企業は、派手さや瞬発力のある即戦力ばかりを採用しようとします。
■解決のポイントは「人に期待しすぎない仕組み」
物流倉庫の本質的な改善は、現場に依存しないシンプルな仕組みづくり に尽きます。
こうした整備が進むと、スキルの高低に関わらず誰もが安定して働ける環境がつくれます。
■最後に 物流倉庫業は「人」を尊重しないと崩れます
物流倉庫は、ロボット化・DX化が進んでもなお、人が中心の現場です。その人が毎日安定して働けるようにすること。それが最終的には品質・生産性・荷主満足につながる。
コンサルとして何十もの倉庫を見てきた結果、物流現場の最大の成功要因は「人に無理をさせない設計」にあると断言できます。
■運送会社(一般貨物)の本音。本当の課題は「見せ方」です。
運送会社は、ある意味 「差が伝わりにくい業界」 です。
なぜなら、トラック・制服・荷扱い・安全対策など、どの会社も一定レベルで行っているからです。だからこそ価格競争になり、結果として利益が薄くなる構造から抜け出せません。
しかし現場を見てきて確信しているのは、「良い運送会社ほど、その価値を外に出していない」
という事です。
■クライアントに言いづらい本音
ここからは少し言いにくいことですが、本音ベースで書いてみます。
1.ドライバーのプライベートの延長がクレームの原因です
荷扱いや運転技術は問題がなくても、言葉遣い・挨拶・態度・見た目で評価が下がるケースは多いです。運送業界では、「いつもの自分のままで仕事をしてしまうドライバー」が一定数います。これは「悪気がない」だけに難しい問題ですが、荷主からすると会社のレベル=ドライバーの印象」です。
実際、クレームの多くが荷扱いよりも人に対して発生しています。
2.服装をルール化していない会社は損しています
数多くの運送会社を見てきましたが、出社時スーツ → 配送時ユニフォームの会社は間違いなく評価が高いです。
上下関係・指示系統の明確化、仕事への切り替え、荷主の信頼感、すべてにおいてプラスになります。
本音を言えば、「制服の価値」を理解していない運送会社が多すぎます。制服はコストではなく、「信頼の証」であり「差別化」そのものです。
3.トラックの整備・清掃は「やって当たり前」
ほぼすべての運送会社が行っています。だから差別化にはなりません。
大事なのはその先です。
・ドライバーの身だしなみ
・名札や肩書きの明示
・言葉遣いの指導
・訪問時の作法
・顧客とのやり取りを標準化
これを徹底すると、荷主はこう感じます。
「あ、この会社は人まで含めて品質管理しているんだな」
荷主の評価が跳ね上がりそうですよね。
4.良さそうに見える顧客対応ほど価値が高い
運送会社の商談は、商品説明ではなく 印象戦です。
荷主は、トラックの種類や台数、保険、配車システム、実績よりも、「安心して任せられる会社か?」を最も重視します。
その判断材料は、
これができている会社は、ほぼ必ず価格競争から脱出しやすくなります。
■運送会社が選ばれる時代の答え
運送業は、差別化が難しいようで実はとても簡単です。
「人の品質 × 会社の見せ方」
この2つが揃っている会社は、例外なく高単価でも選ばれています。
■コンサルタントの視点から見た改善ポイント
このうちいくつかを強化すれば、価格競争のリングから自然と降りられます。
■最後に
運送会社は、「ただ運ぶ会社」ではありません。
今の時代は、荷主の顔を守る会社、最終品質を決める会社、ブランド価値を運ぶ会社、としての役割が強まっています。
ドライバーの見せ方、会社の見せ方を少し整えるだけで、企業価値は一段上のステージに上がりますよね。
【特殊輸送会社(冷凍・重量物・精密機器など)における本音と課題】
― なぜ特殊輸送は価値が正しく伝わらないのか ―
特殊輸送(冷凍・重量物・精密機器など)は、一般貨物とは異なる高度な技術と専門性を必要とする分野です。しかし、多くの企業が共通して抱えるのは、「その価値が荷主に十分伝わっていない」という構造的な問題。特殊輸送に特有の課題、そして企業が気づきにくい本音を整理してお伝えします。
■ 表面的に見える課題
特殊輸送を手がける企業からは、次のような声をよく耳にします。
これらはいずれも正しい悩みですが、実は表に見えている課題にすぎません。
■ 特殊輸送の本質は「技術 × 品質 × 信頼」をどう伝えるか
特殊輸送は、冷凍の温度管理、精密機器の取り扱い、重量物の設置、養生技術など、非常に多くの専門的な工程で成り立っています。しかし現場で感じるのは、「技術力の高さが荷主に正しく伝わっていない」ということです。
はい、理由は単純。
荷主自身が作業の難易度を理解していないため、運ぶ側が説明をしなければ価値が伝わりません。
その結果、
という状態に陥ってしまいます。
■コンサルタントの本音
企業には直接言いづらい内容も含まれますが、特殊輸送の実態は下記だと考えてます。
1. 技術があるのに「説明」が圧倒的に不足している
特殊輸送企業の多くが、一般貨物と同じ説明の仕方をしてしまっています。
これでは違いが伝わりませんよね。本来、特殊輸送は価格競争とは無縁であるべき領域だと考えてます。その価値を示せていないことが、最も大きな機会損失です。
2. 作業の属人化が進んでいる
特殊輸送の現場は職人肌の担当者が多く、経験に頼った作業が主流です。
標準化ができていない現場では、教育コストが高く、事故リスクも常に存在します。
3. ドライバーは「運転手」ではなく会社の価値そのもの
特殊輸送のドライバーは、荷主からは次のように見られています。
そのため、ドライバーの見せ方=会社の評価と言っても過言ではありません。にもかかわらず、一般貨物と同じ服装・対応をしている企業は少なくありません。
例えば、
これらを整えるだけでも、荷主からの信頼性は大きく高まりそうです。
4. 現場対応の「丁寧さ」は、特殊輸送では差別化の核
荷主は、技術(運ぶ・設置する)だけでなく、対応・姿勢・清潔感・説明の丁寧さを非常に重視しています。
これは一般貨物以上に顕著。
これらはすべて技術の一部として評価されてます。
■ 特殊輸送企業が選ばれるために必要なこととは
これらが揃った企業は、例外なく価格ではなく価値で選ばれる会社になります。
特殊輸送は、物流業界の中でも最も専門性が高く、最も差別化しやすい領域です。しかしその価値は、黙っていても伝わるものではありません。
これらを体系的に伝えることで、企業の評価は劇的に変わります。
【流通加工業】コンサルタントの本音
段取り力 × 発送代行の相乗効果で利益は決まる。
流通加工業は、梱包・検品・セット組み・ラベル貼りなど、作業内容によって手間も難易度も大きく変わる特殊な業界です。
同じ作業内容でも生産性は企業によって倍以上変わり、その差がそのまま利益構造に反映されます。
近年、単価競争が激化する中で、加工だけで安定収益を確保するのはますます難しくなっています。
そこで多くの企業が実践しているのが、「保管〜発送までの発送代行を軸にし、流通加工をプラスの収益として積み上げる」という戦略です。
■ よくある課題
1. 加工単価の安さに振り回され、利益が出にくい
流通加工は、手間の割に単価が伸びにくい業務です。荷主の「安くしてほしい」の一言で利益が削られがちになります。
本来は、段取りと生産性の高さを単価に反映すべきですが、市場感覚に合わせてしまいがちなため苦労している企業が多いのが現実。
2. スタッフマネジメントの難易度が高く、品質が安定しない
人の配置、作業説明の精度、ミスの管理体制など、わずかな差が生産性と品質に大きく影響します。
しかし「作業の標準化」ができていない現場が多く、人に依存する運営となり、トラブルの原因になります。
3. 荷主は加工の原価構造を理解していない
荷主からすると「単純作業だから安くできる」と見えがちです。
しかし現場からすると、
・段取り
・生産性の管理
・人材配置
・品質保証
といった見えにくい工数が多く、そこが理解されていないために、単価の正当性が伝わりません。
4. 発送代行を持たない企業ほど経営が不安定
流通加工単体だと仕事量の波が激しく、人件費を固定で抱える企業にとっては非常にリスクが高い構造です。
発送代行(保管〜発送業務)を持っている企業は、売上のベースが安定し、加工の空き時間を収益に変えられるため、利益構造が強い。
■発送代行 × 流通加工の戦略的組み合わせ
◆ 発送代行を軸にすると経営が安定する
発送代行は、
・保管料
・発送作業料
・資材収益
など、比較的安定しやすい収益を生みます。
発送量に応じて人員を配置しやすく、一定の稼働が常に存在するため、売上のブレが小さくなります。
◆ 発送代行で収益を確保しつつ、空き時間を加工の利益に変える
発送代行業務には必ず波があります。
その波を見ながら、現場スタッフの空き時間に加工を組み込むことで、追加の収益(プラスアルファの利益)を生みやすくなります。
ただ作業を詰め込むだけではなく、「どのタイミングで」「どれだけ挟むか」という運用ができる企業ほど強いです。
◆ そのうえで、段取り力を磨くと利益が跳ね上がる
空き時間で効率的に加工をこなすには、段取り力が不可欠。
段取り力が高い企業は、
・加工の生産性が高く
・品質が安定し
・スタッフの動きが合理的になり
・荷主からの信頼も厚くなり
結果として単価の主導権を握れるようになります。
■ コンサルタントの本音
本音①:加工単体で勝負し続けるのはほぼ不可能です
どれだけ優れた現場でも、加工だけでは季節波動と単価の低さが重なり、利益は不安定になります。発送代行を持たない企業は、生産性の改善よりも「案件の増減」に左右されるため、経営が運頼みになりがちです。
本音②:「発送代行 × 流通加工」の組み合わせが最強
発送代行で土台の売上を確保しつつ、加工で利益を積み上げる構造が、安定経営には最も合理的です。加工のすべてを発送量の合間に効率よく配置できると、利益率が跳ね上がる企業が多い。
本音③:段取りと人材マネジメントで単価は作れる
流通加工は価格競争ではなく、段取り × 品質 × スピードという価値によって単価を上げられます。
荷主は実は「安心して任せられる会社」を選んでいます。
【勝てる企業の共通点】
✔ 発送代行を軸にしてベースの売上を確保している
✔ 発送の波を見ながら空き時間を加工に活用している
✔ 現場の段取り力を継続的に磨いている
✔ リーダーが現場の生産性と品質を統率している
✔ 加工単価に価値を反映できている
発送代行 × 流通加工 という二つの強みを掛け合わせることで、価格競争に巻き込まれず、安定して利益を生み出す構造がつくれます。
現場改善、段取り設計、収益構造の見直しなど、御社のスタイルに合わせた支援が可能です。
【物流代行(フルフィルメント)】コンサルタント本音
仕組みで利益が決まるビジネス。
フルフィルメントは、保管・受注処理・在庫管理・ピッキング・梱包・発送までを一気通貫で担う総合サービスです。
荷主からは見えない裏側の工程が多く、利益構造も複雑なため、「やればやるほど忙しいのに儲からない」という状況に陥りやすいのが大きな特徴です。
一方で、正しく仕組みを作れば 極めて高い再現性で利益が積み上がる業種でもあります。
■ よくある課題
1. 業務範囲が広いのに、単価に反映されていない
受注処理、在庫管理、問い合わせ対応など、フルフィルメントは表立たない業務が多いにもかかわらず、その複雑さが荷主に伝わりにくく、「発送作業の延長」として扱われがちです。
結果として、広すぎる業務範囲に対して低すぎる単価が発生しやすい構造です。
2. 業務の標準化が進んでいない
現場によって作業方法が違ったり、担当者に業務が属人化していると、
・ミスが増える
・生産性が上がらない
・新人が育たない
・荷主からの要求に対応しきれない
という悪循環が生まれます。
フルフィルメントは、標準化できていないほど利益が逃げる業態です。
3. 荷主の期待レベルの上昇に追いつけない
ネット通販の拡大により、荷主は「今日注文したら明日届く」という世界観で動いています。
そのため、スピード・在庫精度・通知タイミング・問い合わせ対応など、求められる基準が年々上がっています。
現場の仕組みが追いつかないと、クレーム増と利益恶化が同時に進んでしまいます。
4. 物量の波に人員が左右される
フルフィルメントは、母の日・年末商戦・イベント企画などで大きな波が発生します。
・日によって仕事量が倍になる
・急な対応依頼が多い
・人員計画の精度が低い
これらが続くと、現場の疲弊とコスト増につながります。
■ コンサルタントの本音
本音①:フルフィルメントは物流業ではなくサービス産業です
荷主の行動に合わせて柔軟に動く必要があり、問い合わせ対応や在庫管理などの間接業務の質で勝負が決まります。
単に「預かって出す」だけでは絶対に勝てません。
本音②:利益の差は仕組みの有無で決まる
フルフィルメントは作業量が多いため、仕組みなしで進めている企業は、忙しいのに儲からない構造になります。
逆に、
✔ 動線設計
✔ 在庫管理のルール化
✔ 出荷スケジュールの明確化
✔ 人員配置の最適化
などの仕組みを整えている企業は、物量が増えるほど利益が伸びる傾向にあります。
本音③:荷主教育をしないと単価は永遠に上がらない
「これもお願いできますか?」
「これくらいサービスでやってもらえますよね?」
荷主は悪気なく依頼してきます。
しかし、受けられる範囲と費用の線引きを行わないと、現場は崩壊します。
値上げは交渉より説明が重要。
現場の見える化、工数の提示、改善の成果など、根拠を示さない限り単価は上がりません。
本音④:小規模フルフィルメントほどスタッフの質がすべて
人材のミスが在庫差異、誤出荷、クレームに直結します。
現場リーダーの育成を怠る企業は、どれだけシステムを導入しても改善幅が小さくなります。
■ では、成功している企業はどうしているか?
◆ 成功パターン①:発送代行の基盤をつくり、安定収益を確保
フルフィルメントの核である「保管と発送」を整えることで、毎月の売上が安定し、改善投資ができるようになります。
◆ 成功パターン②:受注処理・在庫管理を仕組み化して人件費をコントロール
出荷量に依存しない間接業務ほど、仕組み化の効果が大きく出ます。
仕組みづくりは、利益の直結ポイントです。
◆ 成功パターン③:荷主との情報共有を徹底する
・在庫状況をリアルに見える化
・問い合わせ対応の基準を統一
・作業範囲と追加料金を明文化
・改善案を定期的に提示
これによって、値下げ交渉どころか値上げを受け入れてもらえる関係が構築できます。
◆ 成功パターン④:現場リーダーの育成に投資している
結局のところ、フルフィルメントの品質は「人」で決まります。
・判断の早さ
・優先順位付け
・コミュニケーション力
・スタッフの管理力
ここが強い企業は、荷主からの信頼とリピート率が圧倒的に高いです。
■ まとめ:
フルフィルメントは仕組み × 人材 × 荷主理解の掛け算で利益が決まる
フルフィルメントは、ただの物流業ではなく、荷主の事業成長に直結する総合サービス業です。
✔ 広すぎる業務範囲を整理する
✔ 標準化で生産性を底上げする
✔ 荷主との線引きを明確にする
✔ 仕組み化で利益を積み上げる
✔ リーダーを育てて品質を安定させる
この5つを押さえれば、利益率は大きく改善し、荷主からの支持も高まります。
御社の現場の状況に合わせて、改善設計や収益モデルの強化もお手伝いできますので、気軽にご相談ください。