■建設業(総合工事)における“よくある課題”とコンサルタントの本音
建設業は、現場・協力会社・元請け・行政手続き…と、関係者・工程が多層的に絡み合う複雑性の高い業界です。そのため、表面的には順調に見えても、裏側に多くの構造的課題を抱えがちです。
建設現場で頻繁に見られる経営課題と、コンサルタントが現場で感じている本音を整理して解説します。
【課題①】現場管理の負担が大きく、社員が疲弊しやすい
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「現場が忙しいのではなく、管理の仕組みが古いまま。」
建設業の現場は個人の力量と経験に依存しすぎており、標準化されていないことで膨大なムダが発生しています。現場の忙しさは構造の問題であり、個人の努力では限界があります。
【課題②】属人化と技術伝承の停滞
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「人が辞めても回る仕組みを作らない限り、永遠に人手不足から抜け出せない。」
人材不足と言われますが、実際は“教育制度・標準化不在”が原因で育たないケースが多いです。
【課題③】協力会社との関係が脆弱化している
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「協力会社を大切な経営資源として扱っている会社は驚くほど少ない。」
協力会社に愛される元請けは、現場が回り、品質が安定し、利益率も高いという共通点があります。
どの業界もしかりですが、協力会社をパートナーとして扱う企業は強いです。
【課題④】原価管理が不十分で、利益の逃げ場が多い
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「原価管理を事務作業として扱う会社は、利益が漏れ続ける。」
建設業の利益の大半は現場で失われるかどうか、で決まります。
原価管理には仕組み化が不可欠です。
【課題⑤】採用が難しく、若手が定着しない
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「建設業は若手にとって魅力のある仕事。ただし、伝え方が間違っていることが多い。」
建築は形が残り、社会に貢献できる魅力的な仕事ですが、会社側がその価値をうまく発信できていないケースがほとんどです。
■まとめ
建設業(総合工事)は、「現場負荷の大きさ」×「技術者不足」×「管理の複雑さ」という構造的課題を抱えています。だからこそ重要なのは、人依存から仕組み依存へ移行すること。そして協力会社・現場管理・原価管理を経営レベルで再設計すること。
御社にも同じ課題が起きていないか、ぜひ他業種の本音記事と合わせてご確認ください。
■解体業における「よくある課題」とコンサルタントの本音
解体業は、建設業の中でもとくに現場依存度の高い業種です。安全リスク・近隣対応・廃棄物処理・原価の不確実性など、見た目以上に専門性が高く、経営課題も多岐にわたります。
ここでは、現場でよく見られる課題と、コンサルタントが感じている本音をまとめています。
【課題①】現場ごとのバラツキが大きく、品質が安定しない
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「解体業こそ標準化を進めるべき業界。ただし、できている会社は少ない。」
現場裁量が強すぎることで、「上手くいっているのではなく、たまたま事故が起きていない」だけというケースもあります。
【課題②】見積りが難しく、原価が読みづらい
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「経験値に頼った見積りはリスクの温床。仕組み化しない限り利益は安定しない。」
見積りの属人化が解体業の収益性を大きく揺らします。実際、儲かっている会社は見積り基準が非常に細かく整備されているように思います。
【課題③】廃棄物処理の管理が複雑で、法令リスクが高い
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「法令違反のリスクを本気で理解していない現場がまだ多い。」
書類1つのミスが大きなトラブルにつながる業界でありながら、管理を人任せにしている会社はまだ少なくありません。
【課題④】近隣対応・クレーム対応のレベル差が大きい
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「近隣対応の差は会社のブランド力の差。」
クレームが発生する会社は、およそ気遣いの仕組みが存在していません。
解体業は、現場ごとの対応品質が非常に問われます。
【課題⑤】人材不足が深刻で、職人の高齢化が進む
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「若手が入らないのではなく、会社として魅力を伝えられていないだけ。」
解体業は技術者としてのやりがいが大きいにもかかわらず、発信の仕方が弱く、若手に届いていないケースが大半です。
【課題⑥】営業が属人的で、仕組みが存在しない
●よくある状況
◆コンサルタントの本音
「営業を仕組み化できれば、解体業は安定して伸びる。」
営業を個人の動きで終わらせる会社が多いですが、本来は案件管理・見積精度・原価管理・協力会社管理の連動が重要です。
■まとめ
解体業は、現場がすべてのように見えて、実際は仕組みがすべての業種です。
どれか一つでも欠けると利益が漏れやすく、トラブルも増えます。
だからこそ重要なのは、人頼りではなく“再現性のある経営”への移行です。
御社の課題も、業界特有の構造が影響しているかもしれません。
ぜひ他業種の記事も参考にしてみてください。
【リフォーム・リノベーション業 ― コンサルタントの本音】
■表に出る課題
リフォーム・リノベーション業界の多くの会社が抱える悩みは、「問い合わせはあるが、受注につながらない」「見積り競争で利益が残らない」「職人不足で施工が追いつかない」といったものです。
集客施策を増やしても、広告を出しても、価格を下げても、なかなか状況は改善しない。
これが現場の実情です。
■裏側にある本当の原因
コンサルとして強く感じるのは、お客様から見た情報量と、実際の提供価値にズレがあるという点です。今のユーザーはSNS・YouTube・比較サイトで情報武装しています。
リフォームの相場、施工手順、トラブル事例まで知っている。
だからこそ、「どの会社も同じに見える」という状況が生まれています。
この業界は“差別化できなければ、価格競争に巻き込まれる”という構造が強い。
ここが最大の苦しさです。
■クライアントには言いづらい本音
正直に言います。
リフォーム・リノベ業の多くの会社は、強みを言語化できていない。
これが受注率を下げている最大の理由です。
本当はこんなことを思っています:
お客様は安さではなく、安心できる会社を選びます。
その安心がどこから生まれるのか。
多くの企業がここを言語化できていないように思います。
■本質的な解決策
コンサルの視点から言うと、リフォーム・リノベ会社が成長するには次の3つが欠かせません。
ユーザーは、リフォームのプロジェクトそのものではなく、プロに任せた時の安心感にお金を払っています。
技術力も大切。
しかし最も差が出るのは伝え方だと考えています。
【電気工事業 ― コンサルタントの本音】
■表に見える課題
電気工事会社の経営者がよく挙げる課題は、下記です。
しかし、実際にヒアリングを重ねると、これらは 症状に過ぎないことが見えてきます。
■本当の問題は、「経営の仕組みが属人的すぎる」
他業種に比べて、電気工事業は圧倒的に人に依存しすぎているという特徴があります。
コンサル視点では、下記が根本的な課題だと考えてます。
これらの要因が、採用困難、利益率低下、元請け依存、離職率増加といった表面の問題を引き起こしています。
■クライアントには直接言いづらい本音
正直に言うと、電気工事業は「今の規模なら回っているように見えるが、このままでは成長しない」という企業が非常に多いです。
本当はこんなことも思っています。
電気工事業は、職人気質の強さが魅力ですが、そのままでは組織としての成長にはつながりません。
■本質的な解決策
この業界が次のステージへ進むために必要なのは、技術ではなく 経営の仕組み化 です。
次の4つだと考えています。
① 見積りの数値化(単価基準×工程データの整理)
属人の経験ではなく、「工数×工程×難易度」 のデータ化で利益率を安定させる。
これだけで受注時点の利益率が10〜20%改善するケースも多いかも。
② 現場担当ごとの差異を埋める標準化
これらを明文化して、誰が対応しても良いようにする。
③ 組織文化のアップデート(若手が育つ仕組み)
若手が続かない理由は、仕事がキツイからではなく、仕事の目的が見えない・成長を感じられないから。育成の段階設計を見える化するだけで辞めにくくなる。
④ 経営と現場の間の言語化されていない溝を埋める
電気工事会社は、「経営は数字を語り、現場は技術を語る」という別の言語で話していることが多い。この溝を埋める仕組みを、成長企業は必ず持っています。
電気工事業は、技術的な参入障壁が高く、さらに今後は電気設備の高度化で需要は伸びます。
しかし成長できる会社と停滞する会社の差は、技術力ではなく経営の仕組み化 にあります。
実は、改善余地と成長余地の大きい業種と考えています。
【設備工事業 ― コンサルタントの本音】
■表に出る課題
給排水設備・空調設備・衛生設備などを担う設備工事会社では、次のような相談内容が多いようです。
どの会社も「技術者不足」を最大の課題として挙げますが、実際にはもっと深い構造的な理由が隠れていると考えてます。
■裏側にある本当の問題
設備工事業は表面的には「技術者不足」に見えますが、別の問題が上がるようです。
① 設計・施工・管理が分断しやすい業界構造
電気工事よりも、設備工事は「設計 ⇔ 現場」の情報ギャップが大きい のが特徴。
これにより「誰が悪いのか不明な手戻り」が頻発します。
② 利益を削るのは追加工事の判断遅れ
設備工事は「追加工事をどれだけ適切に拾えるか」 が利益の命綱。現場は元請けとの関係性を気にして、請求すべきものを請求できていないことが多くあります。
これが赤字現場の最大要因。
③ 技術継承が属人的で、若手が定着しにくい
水・空調・衛生設備は高度な職種であるにも関わらず、技術が背中で覚える文化に残っている会社が非常に多い。若手から見ると、「何年修行すれば一人前かわからない」「成長の道筋が見えない」となり、離職につながる。
■クライアントには言いづらい本音
設備工事会社に対して、実はこんな本音があります。
設備工事業は技術レベルが高いにも関わらず、それが適正な収益につながっていないケースが多いのが現実のようです。
■本質的な解決策
設備工事業は、表面的な施策では変わりません。
必要なのは仕組みそのもののアップデートです。
① 施工図・段取りの仕組み化(現場の属人性を排除)
これらを施工図ベースで標準化することで、手戻りと工期遅延は激減します。
② 追加工事の判断基準を明文化する(利益の回復)
すべてを担当者の経験で判断するのではなく、
を ルール化 するだけで、利益率は安定すると思います。
③ 若手育成の見えるキャリア設計を作る
「何ができればいくら上がる」
「どのスキルを習得すれば次の役割に進める」
これを明確にすると、若手が辞めづらくなり、採用の質も上がります。
④ 元請け依存からの脱却(独自の強みの言語化)
設備工事業は差別化ポイントが多い業種です。
これを明確に打ち出すだけで、直接受注が増え、単価も上げやすくなると。
■最後に
設備工事業は、「技術レベルは高いのに、収益化がうまくいっていない」という業界構造にあります。しかし逆に言えば、仕組み化・情報共有・追加工事管理・育成制度を整えるだけで、利益率は大きく改善します。そして、技術者不足が続く中で、設備工事会社の価値はこれからさらに高まる業種です。
【外構・エクステリア業 ― コンサルタントの本音】
■表に見える課題
外構・エクステリア業者さんの方から話をきいて、次のような表面課題があるようです。
しかし、この業界はほかの建設系と決定的に違う点があります。
それは、顧客が生活者目線で決める数少ない工事である ということ。
なので、他業種とは別の見えない問題が発生しています。
■裏に隠れている本当の問題とは
外構・エクステリア業は、建設業界の中でも、「顧客の感性」がもっとも強く影響する業種と言います。
そのため、他では起きない課題が発生。
① 顧客の「好み」と「予算」のギャップが激しい
外構業者が苦しむ最大の原因は、顧客の要望が、ほぼ必ず予算オーバー案件になること。
SNSやハウスメーカーの見本写真、雑誌などを見て「こんな外構にしたい!」と言うが、実際の予算は半分以下。つまりスタート時点で「理想」と「現実」が合わないプロジェクトになっている。
このギャップが・度重なる修正・受注率低下・デザインの無駄作業などを招いているようです。
② 価格比較される工事にもかかわらず、提案力で勝負する工事である矛盾
この業界は、提案の価値が一番大きい工事なのに、見積りは金額で比べられる。
お客様は下記のように思っている。
この生活者の矛盾が、外構業者を苦しめているみたいですね。
③ 職人の技量差が仕上がりの満足度を大きく左右する
外構工事は、
など多種多様。
施工者の熟練度で仕上がりが全く変わる業界であり、会社の信用が、付き合う職人次第になってしまう。他の建設業より、職人依存度が非常に高い業種。
■クライアントには言いづらい本音
実は、外構・エクステリア会社に対してはこんな本音もある。
外構業者は、技術はあるのに、価値の伝わり方が圧倒的に弱いことが多い。
■本質的な解決策
外構・エクステリア業が利益を安定させるために必要なのは、次の3つと考えてます。
①「提案の仕組み化」でムダをなくす
これだけで、提案の手戻りは大幅に減らせる。
② 客層を3つのペルソナに絞る
外構は客層によって全く異なる。
これを見極めるだけで受注率と単価が跳ね上がるかも。
③ 職人管理の見える化で品質を安定させる
職人の
外構業の品質を決定づけるかも。
外構・エクステリア業は、建設業の中でも感性と生活価値が最も強く求められる業種。
だからこそ、デザイン力、提案プロセス、職人管理の3つが整った会社だけが成長できそうです。
ここを整えられる会社は、受注率も利益率も一気に改善できる伸びしろの大きい業種でもあると考えています。