中小企業の社長の現場との距離感を考えてみた
「中小企業の社長は現場に出るべきか」という問いに対して、当社なりの持論で回答してみます。中小企業の社長さんが大企業の真似をしてしまい、業績が落ちていくことはよくあることです。現場へのかかわり方が大切なんですが・・・。
大企業の社長が現場に出過ぎることは経営の効率を下げる要因になりかねません。しかし、中小企業においては、この考え方をそのまま適用することが必ずしも正解とは言えませんよね。
■ 中小企業と大企業の違い
・大企業と中小企業では、経営の成り立ちが異なります。
大企業の特徴
- 組織が確立されており、各部門が自立して機能している。
- 経営者の役割は、長期的な戦略策定や企業価値の向上に集中すること。
- 社長が現場に頻繁に出ると、逆に指揮系統が乱れることがある。
中小企業の特徴
- 社員数が少なく、社長の影響力が大きい。
- 経営の仕組みが未成熟であり、社長が直接動くことで組織が強化される。
- 人材の育成が経営の成長に直結するため、社長が現場での模範を示すことが重要。
大企業では「現場を支える仕組み」があるのに対し、中小企業では「現場を支えるのは社長自身」という場合が多いのは事実です。
■ 中小企業の社長が現場に出る意義
(1) 組織の士気を高める
社長が現場に出ることで、社員は「社長も一緒に働いている」という実感を持ち、モチベーションが向上します。また、社長が率先して動く姿を見せることで、社員が積極的に行動する文化が生まれます。
(2) 実態を把握できる
デスク上の報告書だけでは見えない問題が、現場に行くことで明らかになります。
- 顧客がどのように感じているか?
- 社員がどんな課題を抱えているか?
- 業務フローに無駄がないか?
「現場のリアル」を知ることが、適切な経営判断につながりますよね。
(3) 顧客との関係を強化する
特にBtoBビジネスやサービス業において、社長が現場に出ることは大きな武器になります。顧客は「社長が直接対応してくれる」と感じることで、信頼感が増し、長期的な取引につながることもあります。
(4) 人材育成につながる
中小企業の成長には、社長の右腕となる人材を育てることが不可欠です。現場で模範を示しながら、「この仕事は君に任せる」と少しずつ権限移譲を進めることで、後継者やリーダーが育ちます。
■ 現場に出る際の注意点
「社長が現場に出るべき」という考えを誤解すると、逆に経営が停滞することもあります。下記は注意項目になります。
(1) 社長が現場作業に没頭しすぎない
現場に入り込むあまり、経営全体の視点を失うと本末転倒です。
例えば、
- 「社長がいないと現場が回らない」状態になる。
- 「現場の仕事を優先しすぎて、経営戦略の策定が遅れる」。
あくまでも「現場を見ること」と「現場に依存すること」は違います。
(2) 権限移譲を進める
社長が現場で模範を示しつつも、適切に仕事を任せていくことが重要です。
- まずは部分的な業務を信頼できる社員に任せる。
- 失敗を許容し、育成の視点を持つ。
- 任せることで、社員の成長を促す。
「社長がいなくても回る組織」を作ることが、最終的なゴールです。
(3) 経営のバランスを取る
現場に出ることと、経営者としての仕事(資金調達、戦略策定、営業拡大など)のバランスを意識することも大切です。
- 週に○回は現場に出る。
- 重要な会議や戦略策定の時間を確保する。
- 必要に応じて現場訪問し、問題があれば迅速に対応する。
■ 社長が現場に出た結果、得られるもの
社長が現場に出て適切に関与することで、次のような成果が得られます。
- 社内の活性化:社員の士気が向上し、協力的な社風が生まれる。
- 顧客満足の向上:社長自ら顧客と関わることで、より良いサービスを提供できる。
- 売上・利益の向上:社員の意識が高まり、結果として業績が向上する。
- 後継者・リーダーの育成:適切な権限移譲を行うことで、次世代の経営者が育つ。
「社長は現場に出てはいけない」というのは、大企業の経営者向けのアドバイスであり、中小企業には必ずしも当てはまりません。
むしろ、中小企業の社長は積極的に現場に足を運び、社員と共に働きながら経営のリアルを把握し、組織を活性化させることが重要です。単なる「作業者」としてではなく、模範を示しつつも権限移譲を進め、最終的には「社長がいなくても回る組織」を作ることが理想的な形となります。
現場に出ることと、経営の仕事のバランスを適切に取りながら、中小企業の成長を支えるリーダーシップを発揮していけたら楽しい経営人生になると思いますよ。(^^♪